真璃さんの地元には、音楽科のある高校はありません。そのため普通科に進学しましたが、「高校生のときが、いちばん辛かったかな」と振り返ります。数学や化学、歴史などの授業やテストで一日が終わり、帰宅後は予習復習に追われる毎日。「いつでも頭のなかにはピアノがいちばんにあったのですが、勉強も怠れないので……とても苦しかったです」。疲れきってしまい、ピアノに向き合う時間があまり取れないこともありました。さらに、コロナ禍で対面レッスンも困難に。それでも、「先生方に支えていただき、音大に進むことができました。充実した環境で、音楽の勉強を続けられました」。大学入学と同時に上京すると、切磋琢磨できる友人たちに出会い、淋しさを感じることもありませんでした。有意義な毎日です。「あのとき、どんなことにも諦めずに努力してよかったと、いまでは心から思えます。地元からこころよく送り出し、応援し続けてくれている家族にも、感謝しています」。
現在は、週に一度ずつ2人の先生からレッスンを受けています。「特に、一音一音の響きを自分でよく聴いて、響きを大切にするようにと指導していただいています。耳や感性を研ぎ澄ますように努力する日々です」。授業が多い日は、練習時間の確保が難しいこともありますが、授業の前後や合間など、空き時間を見つけては、大学の練習室で練習しています。
大学に入学したばかりの昨年度は、ショパン国際ピアノコンクール in ASIA に挑戦。演奏したのは、ショパンの『ピアノソナタ第2番』です。先生から「演奏がまじめすぎる」と言われることもある真璃さんですが、この曲と出会ったことが、自分を変えるきっかけとなりました。ルバートを意識したり、和声の響きを感じたり、作曲された背景を物語にして考えたりすることで、感情や思いを込めて、歌って演奏することができるようになったと言います。真璃さんにとって、ショパンは好きな作曲家の一人となりました。
このように、すばらしいピアノ曲に出会えることは、真璃さんの喜びです。「わたしはソロで弾くことが多いですが、ピアノデュオや室内楽、伴奏者として活躍できるところも、ピアノの魅力。それに、タッチによってさまざまな表情をつけることができ、演奏家によって違う工夫が見られるところも楽しい。そうした違いを感じとって勉強することも、わたしは好きです」。